7月上旬、知床半島先端部の知床岬に特別に許可を得て上陸した。オジロワシの研究者で東京農業大学生物産業学部(北海道網走市)の白木彩子准教授の現地調査に同行し、世界自然遺産地域の「核心部」が、この20年でどう変わったのか、知床岬の「いま」を見た。
調査チームは午前5時20分、ウトロ漁港をチャーター船で出港。3年前に沈没した小型観光船「KAZUⅠ(カズワン)」の事故現場とされるカシュニの滝沖で全員が黙禱(もくとう)し、岬の玄関口となる避難港「文吉湾」に着いた。
丘に登ると草が生い茂る台地が広がり、青空の下をカモメやアマツバメが忙しそうに飛び交っていた。
案内役を務める知床財団の山中正実・特別研究員から、撃退スプレーの扱い方などヒグマに遭遇した時の対処法の説明を受け、林内へと進んだ。
「これ、オジロのフンです」。白木さんが立ち止まり、ミミコウモリの葉を指さした。周辺のあちこちの葉に白いフンが付着しており、抜けた成鳥の尾羽や風切り羽も落ちていた。「ここはとまり場として頻繁に使われていますね」
近くでは携帯電話基地局の電源設備となる太陽光パネルが建設される予定だった。
草をかき分け、岬の先端部へ向かった。草むらの中に開花直前の外来種アメリカオニアザミをいくつも見つけた。
遺産登録10年の前年に企画で訪れたときは、さほど目立たなかった。当時はアメリカオニアザミが積極的に駆除され、在来種が回復傾向にあったためだが、再びエゾシカが増加に転じたことで、エゾシカが好まないアメリカオニアザミや一部の在来種が他の植物を圧倒しはじめているようだった。
トドをねらうオジロワシ
台地の下の海岸線は20~4…